以下の症状に該当する方は要注意です!
- 数日間便が出なくて困っている
- 排便に時間がかかったり、力まないと便が出ない(排便困難感)
- 排便後も残っているように感じる、スッキリしない(残便感を感じる)
- お腹が張り苦しい
- 腹痛が長期間続いている
- 水状、泥状の下痢が続く
- トイレから離れられないほど頻繁に下痢症状がでる
- 下痢に血が混じる(薄桃色から鮮やかな赤い色 出血の色調は様々)
便秘とは
便秘は排便が数日間ないといったことではなく、満足できる排便ができない状態を指します。目安として排便が週に2回以下の場合を便秘とする場合もありますが、お腹が張る、残便感がある、頑張っても少ししか出ない、腹痛があるなど、便が長期間お腹にたまっている状態を指します。
そのため、毎日お通じがあっても少量で残便感があれば便秘であり、毎日お通じがなくても苦痛や不快感がない場合は便秘ではありません。
便秘の原因
疾患や腸の異常によって起こっている便秘は器質性便秘です。炎症やポリープなどの器質的問題がなく、蠕動運動など腸の機能に問題があって起こるのは機能性便秘です。便秘の原因のほとんどは機能性便秘が占めています。そして機能性便秘は、さらに3つの対応に分けられます。
便秘のタイプ
便秘は以前、「器質性・症候性・薬剤性・機能性」の4種類に分けられていましたが、現在は「器質性・機能性」の2種類にまず分けられています。さらに器質性便秘は「狭窄性・非狭窄性」に分けられます。狭窄性の器質性便秘は、大腸がんやクローン病などによって生じています。 器質性便秘の非狭窄型と機能性便秘は、症状によって「排便回数減少型・排便困難型」に分けられます。排便回数減少は週3回未満の排便、排便困難は直腸内の便排出が不十分で残便感がある状態が目安となります。 また、病態で分けて考えた場合、便秘は「大腸通過正常型・大腸通過遅延型・便排出障害」に分けることができます。大腸通過正常型は食物繊維の摂取によって改善が見込めますが、大腸通過遅延型と便排出障害の場合には食物繊維の摂取では改善が難しいなど、適切な治療が異なります。
原因分類 | 症状分類 | 分類・診断のための検査方法 | 専門的検査による病態分類 | 原因となる病態・疾患 | |
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器質性 | 狭窄性 | 大腸内視鏡検査、注腸X線検査など | 大腸癌・クローン病、虚血性大腸炎など | ||
非狭窄性 | 排便回数減少型 | 腹部X線検査、注腸X線検査など | 巨大結腸など | ||
排便困難型 | 排便造影検査など | 器質性便排出障害 | 直腸瘤、直腸重積、巨大直腸、小腸瘤、S状結腸瘤など | ||
機能性 | 排便回数減少型 | 大腸通過時間検査など | 大腸通過遅延型 | 特発性 症候性:代謝・内分泌疾患、神経・筋疾患、膠原病、便秘型過敏性腸症候群など 薬剤性:向精神薬、抗コリン薬、オピオイド系薬など |
|
大腸通過正常型 | 経口摂取不足(食物繊維摂取不足を含む) 大腸通過時間検査での偽陰性など |
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排便困難型 | 排便造影検査など | 硬便による排便困難 | 硬便による排便困難・残便感(便秘型過敏性腸症候群など) | ||
機能性便排出障害 | 骨盤底筋協調運動障害 腹圧(怒責力)低下 直腸感覚低下 直腸収縮力低下 など |
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「日本消化器病学会関連研究会慢性便秘の診断・治療研究会編:慢性便秘症診療ガイドライン2017,p.3,2017,南江堂」より許諾を得て改変し転載
引用文献
1.日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会 編:便秘の定義.慢性便秘症診療ガイドライン2017.南江堂,東京,2017:2.
便秘によって起こる身体への悪影響
便は、身体にとって栄養素や水分を取り去った後の不要物であり、スムーズに排出できないとさまざまな悪影響を与えます。便が長く体内に留まっていると腸内細菌によって便が腐敗してガスを発生させ、腸内細菌叢のバランスが崩れて、幅広い症状を起こす可能性があります。
膨満感、お腹の張り
お腹の張る苦しさや不快感を起こすことがあります。また、お腹がぽっこり突き出してしまうこともあります。
腹痛
お腹が張って痛みを生じることがあります。
肌荒れ
腸内細菌叢のバランスが崩れることで、肌荒れが起こることがあります。
不定愁訴
頭痛、肩こり、吐き気、イライラ、不眠などの睡眠障害の原因になることがあります。
便秘の治療
便秘の治療は、食事内容や運動などの生活習慣の改善が重要です。継続することが大切なので、まずは無理の範囲で始めていきましょう。
生活習慣の改善で効果が得られない場合には、薬物療法も行います。便秘薬には様々な作用機序のものがあり、効果の出方にも個人差があります。便秘の原因を見極めた上で、症状や体質、ライフスタイルなどに合わせた処方が重要になります。
また、当院では血液検査、腹部X線検査、大腸カメラなどの検査も行っており、きちんと原因を判断したうえで、最適な治療計画をご提供しています。
便秘薬の種類
膨張性下剤
便の水分量を増やして膨張させることで腸を刺激し、スムーズな排出を促します。
便軟化剤・浸透圧性下剤
便をやわらかくして、スムーズな排出を促します。
刺激性下剤
腸に刺激を与えることで蠕動運動を促進して、便がスムーズに運ばれるようにします。
消化管運動改善薬や漢方薬など、これ以外にもさまざまな薬剤の処方が可能です。便秘やお通じに関するお悩みがありましたら、1度ご相談ください。
便秘の改善と再発予防のために
便秘の解消や再発予防には生活習慣の改善も不可欠です。無理なくできる改善から取り入れて、便秘を解消し、再発させないようにしましょう。
食事
こんにゃくや海藻、根菜類など、食物繊維が多い食品を積極的に摂取してください。食物繊維は便の水分とかさを増やすため、スムーズな排便につながります。
水分摂取
水分をしっかりとらないと体内の水分が不足して便が硬くなって便をスムーズに排出できなくなります。1日に2リットル程度の水分を摂取するようにしましょう。また、起床したらまずコップ1杯の水を飲むと腸が刺激されて排便が促されます。
適度な脂肪摂取
過剰な脂肪摂取はお勧めできませんが、適度な量の脂肪を摂取することで腸粘膜が刺激されて便のスムーズな排出を促します。
3食を毎日、できるだけ同じような時間にとる
3食を毎日、同じ時間にとることで、消化管の機能や体内時計のリズムも整ってきます。特に、朝少し早起きして水をコップ1杯飲み、朝食を食べることで自然に便意を感じるようになり、スムーズな排便習慣につながります。
排便習慣
便意があったらすぐにトイレに行くことを心がけます。便意を我慢してしまうと便意を感じなくなって便秘が悪化してしまいます。また、毎日、朝食後には必ずトイレに行くようにすると、次第に毎朝便意を感じるようになり、正しい排便習慣が付くようになります。
冷えの解消
腹部や腰を冷やさないようにしてください。腹部や腰が冷えると腸の血行が悪化して動きが悪くなり、スムーズな排便ができなくなってしまいます。
マッサージ
腰にクッションをあてがって仰向けで横になります。親指以外の指をそろえておへその周囲を右回りに軽くマッサージします。円を描くように30回程度軽くマッサージしてください。
運動
少し汗ばむ程度の有酸素運動を、毎日10分程度行いましょう。血行が改善して腸の活動も活発になります。スムーズな排便には腹筋などの筋肉を鍛えることも有効です。
ストレスを上手に解消
腸の蠕動運動などは自律神経によってコントロールされています。ストレスは自律神経のバランスを崩して腸の機能にも悪影響を与えます。睡眠や休息をしっかりとって、趣味などに集中する時間を作り、ストレスを上手に解消してください。